「スパイ防止法」とは、世界いずれの国にもあるスパイ行為を取り締まる法律です。
「防衛秘密」の保護に関する措置を定め、スパイ行為を防止することによって日本の平和と安全を守るのが立法の趣旨。
「特定秘密保護法」が2014年12月に施行される前は、国家公務員法、自衛隊法などの公務員の守秘義務だけ、あるいはスパイ行為に付随する行為(電波法や出入国管理法など)だけで取り締まっており、コソ泥並みの軽い刑罰に過ぎませんでした。「スパイ防止法」は、スパイ行為そのものを摘発する法律となります。
保護すべき「防衛秘密」とは?
防衛上秘匿を要し、かつ公になっていないもの、さらに当局によって防衛秘密と指定されたものが「防衛秘密」ということになっており、きわめて厳格に限られています。その上で第三条は「防衛秘密保護上の措置」を明記し、行政機関の長が防衛秘密の指定を行い、取扱責任者や取扱官を定めるなど保護上の措置を採ることを義務付け、また秘匿の必要がなくなった場合の指定解除など細かく規定しています。外交機密についても安全保障の中に入るので含めているのが特徴です。要するに我が国の安全に影響を及ぼすか否かが基準になり、何が何でも秘密になることはありません。
スパイ行為とは?
スパイ行為とは、外国に通報することを目的または不当な方法で防衛秘密を探知、収集して、それを外国に通報することをいいます。諸外国ではスパイ罪はその国の最高刑(死刑のある国は死刑)で臨んでいますが、同法案では無期としています。不当な方法とは、人をだまして防衛秘密を呈示させたり公務員でない者を金品で買収する行為、あるいは婦人の貞操を提供するなどの行為などを指します(これらは違法ではありませんが不当な方法)。これらも処罰対象にしないとスパイ行為は防げません。
マスコミの取材活動はどうなる?
「スパイ防止法」は、法律全体の解釈適用を規定し、表現の自由と基本的人権を守り、出版・報道機関の自由な活動を保障しています(言論に関わる法律にはすべて同種の「解釈規定」があります)。同法があってもマスコミの正当な取材活動は一切、妨げられません。すでに最高裁は取材活動が仮に情報漏えいを誘導的あるいは唆(そそのか)すようなことがっても、それが真に取材目的なら報道の自由に最大限に配慮して取材活動の正当性が認められるとの判決を下しており(最高裁第一小法廷決定=1978年5月31日)、これが同法においても適用されるのは言うまでもありません。
「戦前の暗黒社会」に逆戻りしないか?
「戦前の暗黒社会に逆戻りする」というのは詭弁です。現に欧米などの民主主義国はスパイ防止法があっても暗黒社会ではありません。何よりも戦前と現在の日本は憲法も政治体制も違っています。現行法は強制処分法定主義、令状主義の原則のもと捜査段階での身柄拘束や捜査押収活動が厳しく規制されてます。したがってスパイ防止法ができても「暗黒社会」になることはあり得ません。
海外ではどうなっているのか?
諸外国では国の基本法典である刑法に例外なくスパイ処罰の規定を設けており、刑罰はその国の最高刑(死刑であるところは死刑)で臨んでいます。米国では連邦法典第18編37章で様々なスパイ行為を犯罪定型化して規定、同章794条は「合衆国は侵害し、または外国を利することになるように使用されるのを認識しながら、国防に関する情報を収集または外国に通報・引き渡した者」を「死刑、無期または有期禁錮刑」によって処断するとしています。基本法典の他に対諜立法として米国では原子力法(1946年)、民間防衛法(1950年)、破壊活動規制法(同)など総計約50の特別法を設けています。これが世界の常識で、スパイの防止と処罰を水も漏らさぬ法制で確立しているのです。スパイ処罰の法制がない日本は、国家の体をなしていないと言っても過言ではないでしょう。