濱田 浩一郎(歴史学者、作家、評論家)

 

 

 

 

 

 日本は「スパイ天国」と言われて久しいが、今に至るまで「スパイ防止法」が存在しない。2013年に「特定秘密保護法」が成立・公布されたことで良しとする識者もいるかもしれないが、それでは不十分である。特定秘密保護法は、日本の安全保障に関する秘匿情報の漏洩を防ぐための法律であり、スパイ行為自体を取り締まるものではないからだ。

 日本ではスパイや工作員による活動を長年、野放しにしてきたために、テロ行為・人権侵害とも言うべき、北朝鮮による拉致事件が頻発してきた。スパイ防止法が存在していたら、拉致は防げたと言われている。北朝鮮による犯罪が明確になっても未だスパイ防止法が制定されていないということは、今後もこのような外国による拉致が起りうる可能性があるということだ。

 一刻も早くスパイ防止法を成立させ、スパイの暗躍を抑え、国民の安全を守らなければいけない。スパイ防止法制定に向けた動きは80年代に活溌化したが、野党やマスメディアの大反発もあって廃案となってしまった。 廃案から約30年が経過し、国際環境も政治状況も大きく変わってきている。そしてスパイは、公務員の中だけに潜んでいるのではなく、政界・経済界そして民間にもいるのだ。

 こうした現状に対応するには、80年代のスパイ防止法案の内容を踏襲するのではなく、諸外国の事例を参考にしながら、新たなスパイ防止法を創っていかねばならない。スパイ防止法制定反対派をどのように論破していくのか? 今、日本に必要な新たなスパイ防止法とはどのようなものなのか? そもそも、なぜスパイ防止法が必要なのか? そのような疑問や課題を歴史や諸外国の事例を参考にしながら、これから国民の皆さんと一緒に解き明かしていきたいと思っている。

【連載】なぜ新・スパイ防止法が必要なのか(1)

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濱田 浩一郎(はまだ こういちろう)
1983年生まれ、兵庫県相生市出身。
歴史学者、作家、評論家。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
兵庫県立大学内播磨学研究所研究員・姫路日ノ本短期大学講師・姫路獨協大学講師を歴任。
現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。
現代社会の諸問題に歴史学を援用し迫り、解決策を提示する新進気鋭の研究者。
著書に『播磨赤松一族』(新人物往来社)、『あの名将たちの狂気の謎』(中経の文庫)、『日本史に学ぶリストラ回避術』(北辰堂出版)、『日本人のための安全保障入門』(三恵社)、『歴史は人生を教えてくれる―15歳の君へ』(桜の花出版)、『超口語訳 方丈記』(東京書籍のち彩図社文庫)、『日本人はこうして戦争をしてきた』(青林堂)、『超訳 橋下徹の言葉』(日新報道)、『教科書には載っていない 大日本帝国の情報戦』(彩図社)、『昔とはここまで違う!歴史教科書の新常識』(彩図社)、『靖献遺言』(晋遊舎)、『超訳言志四録』(すばる舎)、本居宣長『うひ山ぶみ』(いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ16、致知出版社)、『龍馬を斬った男 今井信郎伝』(アルファベータブックス)、『勝海舟×西郷隆盛 明治維新を成し遂げた男の矜持』(青月社)、共著『兵庫県の不思議事典』(新人物往来社)、『赤松一族 八人の素顔』(神戸新聞総合出版センター)、『人物で読む太平洋戦争』『大正クロニクル』(世界文化社)、『図説源平合戦のすべてがわかる本』(洋泉社)、『源平合戦「3D立体」地図』『TPPでどうなる? あなたの生活と仕事』『現代日本を操った黒幕たち』(以上、宝島社)、『NHK大河ドラマ歴史ハンドブック軍師官兵衛』(NHK出版)ほか多数。
監修・時代考証・シナリオ監修協力に『戦国武将のリストラ逆転物語』(エクスナレッジ)、小説『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』(以上、東京書籍)、『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』全15巻(角川書店)。