警視庁公安部は2007年2月、防衛庁(現防衛省)技術研究本部の元技官を在職中に潜水艦に関する資料を持ち出した窃盗容疑で書類送検しました。資料は中国に渡っており、単なる窃盗事件ではなく中国によるスパイ事件だったのです。 

 元技官は1971年に防衛庁に入庁し、技術研究本部で潜水艦を造る鉄鋼材料の強度向上の研究などを担当していました。2002年、同本部第一研究所の主任研究官で定年退職。資料を持ち出したのは在職中の2000年のことで、「高張力鋼」と呼ばれる潜水艦の船体に使われる特殊鋼材や加工に関する技術報告書(B5版34ページ)をコピーし、無断で持ち出していました。 

 報告書は防衛庁が自衛隊法で定める防衛機密と指定していなかったので、警視庁は自衛隊法違反容疑ではなく、窃盗罪で書類送検したといいます。防衛庁は甘過ぎると多くの専門家が呆れ果てました。 

 と言うのも「高張力鋼」情報の漏えいは、潜水艦の潜航深度や魚雷などによる破壊程度を教えるばかりか、それを「敵」の潜水艦建造に利用されれば、わが国への脅威が増すからです。まさに売国的スパイ活動と言うほかありません。 

 元技官は中国大使館の武官らと付き合いの深い貿易会社元社長の要求に応じて報告書のコピーを渡していました。元技官は現職中の2001年末に元社長に誘われて中国・北京に渡航しているばかりか、国内では在日中国武官らと再三、飲食を共にしていました。 

 明らかに元技官は金につられてスパイに成り下がったのです。元社長は防衛関係者と広く接触し、2004年までの10年間に約30回も中国に渡航しています。中国の海軍力増強は、実にスパイ活動によって日本の技術を盗み出して行っているのです。

> 中国による産業スパイ活動